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三世代で旅行に出かけた帰り道

9月18日
読了時間: 4分

更新日:3 日前



三世代で旅行に出かけた帰り道。孫は眠り、息子や娘は運転席で黙っている。楽しかったはずなのに、いちばん気を遣って、いちばん疲れていたのは自分だった。そんな覚えはありませんか。三世代旅がうまくいかないのは、仲が悪いからではありません。たいていは、誰が何を決めるのかが曖昧なまま出発してしまうからです。



三世代旅には、三つの時計が同時に動いています。孫は朝から全開で、昼過ぎに電池が切れます。息子や娘の世代は、運転と予約と支払いで気を張り続けています。そして自分たちは、午後にいちど腰を下ろしたい。この三つの時計を一本にそろえようとすると、どこかに必ず無理が出ます。

やっかいなのは、全員が相手を思いやっているのに、うまくいかないことです。「孫が喜ぶなら」と歩き続ける。「親が疲れているだろうから」と早めに切り上げる。「せっかく連れてきてもらったのだから」と何も言わない。よかれが重なった結果、誰の希望も通らない一日ができあがります。

役割分担というと、仕事の割り振りのように聞こえるかもしれません。けれど三世代旅で必要なのは、労働の分配ではなく、決定権の分配です。この場面では誰の判断で動くのか。それだけ決まっていれば、遠慮の押し合いはずいぶん減ります。


出発前に、ゆるく係を決めておく方法があります。正式なものではなく、家族の会話のなかで「じゃあそこはお願い」と言い合う程度で十分です。

• 行程係:行き先と時間の最終判断をする人。迷ったときはこの人が決めます。息子や娘の世代が担うことが多い役です。

• 記録係:写真や動画を撮る人。中学生や高校生の孫に任せると、思いがけない角度の一枚が残ります。

• 食事係:昼食と夕食の場所を押さえる人。全員の好き嫌いをいちばん把握している人が向いています。

• 休憩係:「そろそろ座りませんか」と最初に言う人。

この四つ目が、実は要になります。休憩を言い出す役が決まっていないと、誰もが我慢比べを始めてしまうからです。休憩係を引き受けると、自分の疲れを訴える必要がなくなります。「みんなのために」座る流れをつくれるので、言い出しやすくなるのです。人生後半にさしかかった世代がこの係を担うのは、遠慮ではなく、旅全体を支える働きだと考えてよいと思います。


三世代が朝から晩まで同じ動線をたどる必要は、実はありません。うまくいっている家族旅行ほど、途中で分かれて、また合流しています。

たとえば午前中は、孫と親世代でアスレチックや水族館へ。自分たちは宿の周辺を散歩して、喫茶店で一時間ほど過ごす。昼食で合流し、午後はゆるやかな見学に全員で出かける。夕方は先に宿へ戻り、風呂の順番をずらす。決めておくのは、集合の時刻と場所だけです。

分かれることに気が引ける方もいるかもしれません。けれど、ずっと一緒にいることと、いい時間を過ごすことは同じではありません。二時間離れていたからこそ、昼食の席で話すことが増える。孫が「さっきこんなのがあった」と報告してくれる。その報告を聞く役回りは、悪くないものです。



合流の場所は、屋内で、座れて、雨でも困らないところを選ぶのがこつです。駅の改札前や広場は分かりやすい反面、待つ側に負担がかかります。道の駅の休憩スペース、宿のロビー、商業施設の一階。そういう場所を先に一か所決めておくと、多少の遅れが出ても気持ちがざわつきません。

拠点になる宿をひとつ決めて、そこから出たり戻ったりする形にすると、荷物の移動も減ります。移動そのものが目的地になってしまう行程は、どの世代にとっても消耗が大きくなりがちです。


三世代旅で後味を左右するのが、費用の扱いです。祖父母がすべて負担するのが恒例になると、翌年から誘うほうが気を遣ってしまい、声がかかりにくくなることがあります。逆に、その場の流れで財布を出し合うと、あとから小さなしこりが残ることもあります。

おすすめは、出発前に一度だけ、大まかな線を引いておくことです。宿代はこちらで持つ、現地の食事は各自、交通費は折半、といった具合です。細かい精算をしないと決めてしまうほうが、旅先での会話は軽くなります。

孫へのお土産も、あらかじめ「ひとり一つまで」と伝えておくと、売店の前で気まずくなりません。買ってあげたい気持ちは自然なものですが、上限があると、選ぶ時間そのものが楽しくなります。お金の話を切り出すのは気詰まりかもしれません。それでも「今回はこうさせてね」と一度伝えておくほうが、旅のあいだじゅう遠慮し合うより、ずっと楽です。


膝の具合、長い階段、薬を飲む時刻。こうしたことを黙っていると、旅先で無理が出やすくなります。歩ける距離や休憩の間隔を、出発前に伝えておくと、行程を組む側も助かります。「迷惑をかけたくない」という気持ちが、かえって当日の負担を大きくしてしまうことは少なくありません。

持病がある方や、服薬を続けている方は、いつもと違う気候や移動が続く旅の前に、かかりつけの医師へ相談しておくと安心です。体調の感じ方には個人差がありますし、旅先での無理は自覚しにくいものです。移動中に胸の苦しさ、強いめまい、ふらつきなどを感じたときは、様子を見ずに早めに医療機関を頼ってください。

 
 

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